○鰐淵洋子君 公明党の鰐淵洋子でございます。
今日は四人の参考人の皆様、それぞれのお立場での貴重な御意見、大変にありがとうございました。今、当委員会で教育の課題、またこの関連法案につきまして様々審議をさせていただいておりますが、本日、本当に貴重な御意見又は指摘等もいただきまして、今日のこの参考人質疑、これを基に引き続きしっかりと審議もさせていただきたいと感じました。
初めに梶田参考人と近藤参考人に、私立学校に関する教育行政ということでお伺いをしたいと思います。
これは、先ほどから近藤参考人からも様々御意見をいただいておりますが、改めて私立学校の意義ということでお伺いいたしまして、本当に、教育分野はもちろんですが、日本社会における私立教育の意義、役割、大変に大きいものがあるということを改めて実感をいたしました。
そこで、私立学校といいましても公教育の一端を担っているということでございますので、その中で、一定ルールの中で更に長所を伸ばしながら独自性、私立学校の独自性とかそういったものを発揮していく、そういった取組が私立学校ができるようにするためには、この教育行政、これからどのようにかかわっていけばいいのかということで、また更に御意見がございましたらいただきたいと思います。
同じく、梶田参考人にも私立学校における教育行政の在り方ということで御意見をいただきたいと思います。
○参考人(近藤彰郎君) 公教育の一端を担う私学がということで、私立学校は、私どもは元々、私立学校設置を認可されているわけですから、公教育、私学と呼ぶのが合っているのか、学校法人立学校ということだろうというふうに思います。
そういう意味でいうと、当然、法的な社会ルールの中、その長所を伸ばしていくということは非常に当たり前のことなんですけれども、先ほど申しましたように、やっぱりそこに公立とそれから私学との役割分担というのはありますから、できるだけ活用をうまくしていただきたいと。そういう意味で、私立学校に対して行政がかかわり合っていくときには、やっぱり私立学校の独自性を損なわないようによく御相談をした上で、本当に私立学校がやっていこうとしている教育が国家国民のために、あるいは市民のために役に立つのかどうかという判断をしながらやっぱりしていくのがいいと思います。
行政判断でこう決めましたからそうやってくださいという、これは責任がすべて行政の方に行ってしまいますから、先ほど言ったように、言われたとおりやったんだよと、でも結果についての我々責任を負いませんよという形のスタンスはやっぱり私立学校というのは取るべきじゃないというふうに思っておりますので、自己責任を取れる範囲で、もちろん社会の役に立ちたいと思って学校運営をしているわけですから、そこのところでの接点を持っていただければ非常に有り難いというふうに思っております。
○参考人(梶田叡一君) ありがとうございます。
今日、近藤先生から非常にるる述べられたように、私は、私立学校ということの重要性をもう一度日本の教育全体の中で再確認しなければいけないんじゃないかと、こう考えております。
公立も、もちろん当然ですけれども、これ大事です。ただ、公立で今一つ一つの学校は、自主的に、自律的に、個性的にということでやって、今そういう努力が進んでおります。これもとっても大事なんですけれども、やはり公立ということで余り学校間に違いが出てくるのはなかなか難しいところもあります。また、小回りも利かないところもあります。
ところが、私立というのは個々の学校でどんどんどんどんいろんな試みを大胆にやっていくことができます。もちろん公教育ですから、教育基本法、学校教育法、学習指導要領等々、そういう大きな網はみんなに同じように掛かってきますけれども、ただ、この私学というものは、私、本当に先ほどの近藤先生のお話じゃないけど、言うのはちょっとまずいかなと思って、いずれにせよ、私学と言われているようなものは、学校法人立の学校はそういう言わば公立でやれないところをどんどんどんどん乗り越えてやっています。
実は私は、今国立大学法人は非常に自由になりましたので、私は国立大学法人の学長をやりながら、同時に仙台と松江で学校法人の理事長もやっております。仙台の幼小中高を持っているところ、これ高等学校全クラスで週一時間、仙台藩作法、これ入れております。こういうのを非常にいち早く取り入れてやれるとか、あるいは小学校でなぎなたを全部にやらせるとか、これは公立でやれないことはないんですけれども、それを校長先生以下、これはやっぱり必要だね、やろうねと思ったら次の年度からすぐやれるわけですよ。
こういう私学の言わば小回りの利くところ、あるいは公立をどうやってひとつ乗り越えていくかという、そういう発想があるところ、これが日本の公教育の全体の多様性を担保するものになっているんじゃないか。だから、公立だけで本当にやれないとは言いません。だけれども、私立が大胆に、しかも小回りの利く形でどんどんどんどん新しい工夫をやっていくから、国民の皆さんに言わば非常に多様な形での教育機会あるいは教育の実際のプログラムが提供できると、こういうふうになっているんじゃないかと思います。
したがって、今の鰐淵先生のお話もありましたように、やはり私立に対しては、法的に最小限のもちろんいろんなチェックは必要ですけど、それ以上超えて具体のところでできるだけ干渉がない、これが大事だと思っております。
私立学校法を改正していただきまして、私立学校を公法人として、公の法人として、これは社会的に責任を持つ形で運営する、そういういろんな条件が付けられております。これを守っている限りは、私は十分やっていける、また現実にも十分やっておられるというふうに思っておりますので、是非その点についてこの機会にもう一段御理解をいただきたい、そういうふうに思っております。
○鰐淵洋子君 ありがとうございました。
続きまして、学習指導要領の運用についてお伺いしたいと思います。これも先ほど近藤参考人の方からもお話ししていただきましたが、この点につきまして、改めて近藤参考人と、梶田参考人にもお伺いしたいと思います。
学習指導要領を遵守することは当然のことでございますが、その中で私学の自主性、独自性を十分配慮することも重要でありますし、また、これは公立の学校も同じだと思うんですけれども、しっかり学習指導要領の枠内で、学校ごとの実情に応じた、先ほども近藤先生もおっしゃっておりましたが、個人、生徒の実情もございますし、そういった柔軟な教育をもう少し尊重していってもいいんではないかと私も思っております。
その点におきまして、この学習指導要領の運用に当たりましてまた改めて御意見をいただきたいと思います。梶田参考人にもお願いいたします。
○参考人(近藤彰郎君) 法律的な論議は私は避けようと思います。
ただ、現場からのいわゆる状況ですね、どういうことが教育的に有効かという観点から学習指導要領というものを考えてみますと、今までも恐らく学習指導要領というのは一つの基準として我々はとらえていたということがあります。だからこそ、その運用の中で生徒、教育にとっていい方法は何かということで純粋にそれを追っていった結果、例えば中高一貫教育、これは中学校と高等学校というのは違う学校ですね、同じ学校法人の中だけれども違う学校です。だけれども、教育の効率性とか生徒にとってプラスになることは何かということでその連携を図ったということですから、法律的に言えばもしかしたら連携しちゃいけないのかもしれないし、連携していいということにはなっていません。今は公立の学校の中高連携、いわゆる併設校型あるいは中等教育学校型というのは法律で決められてますから、それで担保されているというふうに公立は考えていらっしゃいますけど、我々はそれがない時代からやっているわけですから、そういうものを、要するにこれ、私は創意工夫だと、教育現場における創意工夫だと思っているんですが、それを取り上げないような形で学習指導要領というのを運営されていかなければいけないんじゃないかと。
一つの例で申し上げますが、例えば未履修と一口に言いましても、先ほど言いましたように、必修科目がそもそも入ってないという未履修もあります。中学校においては、実は東京では三十校近くが未履修だということで、私学七十校あって、国公立は一校もないということで国会でも言われたんですけれども、じゃ東京の未履修問題、どんな問題なのかと。よくよく中身を見ますと、実は美術がほとんどなんですよ。ほとんど美術です。美術の授業が、いわゆる学習指導要領では、中学校一年生四十五単位、二年生三十五、三年生三十五と、百十五単位をやりなさいということになっているんですね。
私立学校で指摘された学校は、実は、じゃ美術をやってないのかというと、百十五単位以上やっているんです。ある学校は百四十単位以上やっている学校あります。ただ、美術というのは、例えば五十分授業やるときに、準備をして、絵の具からキャンパスから準備をして、そして授業をして、そして最後、後始末しなきゃいけないんです。筆を洗ったり、工作をしたらそのごみを片付けたりしなきゃいけない。そうすると、実質的にできる時間というのは三十分ぐらいしかないんですね。それを効率的にやるために、一、二年生のときに二時間連続でやるわけです。だから、実際にやっている時間は多いんですよ。百四十時間やっているんです。でも、三年生のときにはもう終わっていますから、当然、別のことをやっているわけですよ。学年配当されたものを、これは基準としては「別表第二に定める授業時数を標準とする。」というふうになっていますから、その中での運用を私立学校としてはしたわけです。
ところが、それが未履修だというんですよ。各学年配当されているんだから、そのとおりにやれと。これは、幾ら何でもはしの上げ下ろしまで全部規定されて、いい教育しろと言われても、これは教育現場の先生たちは思考停止に陥りますよ。言われたとおりにやらなきゃいけないんだと。私は、それはやはり何かの運用の段階で認めていくか、あるいは要するに法律というのは強行規定、任意規定があるわけですから、その中で判断をすべきだと。我々、法律を犯したというふうに言われるのは非常に心外なんですよ。経済犯とか刑法犯と同じように悪いことしたみたいに言われる。いい教育求めていったのに、結果的にこの表からは外れていたと、けしからぬと言われると、ちょっと先生たちも動き取れなくなっちゃうのかなと。
これは、ですから、極端なものは注意してくださいと。でも、運用でやっぱり教育大事だということで、現場を中心に考えているという点では是非御理解いただいて、方法論二つあると思います。運用でいくか、いわゆる先ほど言いましたように現場での裁量権というものを最大限認めていただくか。責任はそれぞれの現場の長が負うということでいいと思うんですが、是非お願いしたいと思います。
終わります。
○参考人(梶田叡一君) 私は今、中教審の教員養成部会部会長をさせてもらっておりますから、指導要領というのは大事な一つの法令としてみんなこれを守っていかなきゃいけないですよねと、こういう立場で申し上げます。
ただし、これ、そうなんですけれども、二〇〇〇年までは標準ということが非常に強調されてきたんですね。で、二〇〇一年からは、先ほど言いましたように流れが変わりましたんで、最低基準というふうな言い方にしております。標準ということは、標準は最低基準ですという、そういうことになると。どういうことかといいますと、やはり長い間に、本音と建前じゃないんですけれども、指導要領に書かれてあるそういう事柄と、実際に子供たちが教室で学ぶ、授業で学ぶことが、やはり一部乖離している部分が出てきた。乖離せざるを得ない部分があるんですよ、上に行けば行くほど。
私の息子が、十年ほど前に一年間、大阪の府立高校の定時制の理科の先生をやりましたけれども、そのときに驚きましたのは、その高校は半分が夜間中学から来られた生徒、それから半分がそうでない普通の、普通のといいますか、若い生徒だったんですけれども、ともかく数学と理科はほとんど分からないという生徒たちでした。ということで、どういうことが起こっているかというと、しかもそこでは出席も取らないそうなので、授業で分かったら来ると言うんですね、充実感があれば。分からなきゃだれも来なくなると、そういうところだったわけですけれども。
そういうところで、理科をやるのに、教科書は高校の教科書を取っているわけですけれども、しかし、実際に教える中身としては、一生懸命毎日毎日息子はパソコンで小学校の理科の教科書からいろんなことを抜き出して、高校の理科と関連ある部分を何か抜き出しては毎日毎日教える。そうしないとかみ合わないわけですね。そういうことが、例えば九七、八、九%が高等学校へ行っている、そういう実情の下では現実に起こっているわけです。
それから、中学でも、地域によっては、教科によってはなかなか、教科書は取っているけれども、それをそのままそのとおりに教えたんでは分からないということもあるわけですね。
というようなことで、私たちは今二つの方向を推し進めようとして教育課程部会で話しております。一つは、最低基準ということを大事にしていくという方向です。これは何かというと、指導要領は、これだけは押さえましょうというものを書く、これは時間数にしても内容にしても。それを一応クリアしておれば、あと、子供に合ったいろんなことをプラスアルファしてやったらいいと。もう既に二〇〇一年に教科書につきましては検定要領を変えまして、そういう方向になっておる。つまり、指導要領どおりの教科書じゃなくて、プラスアルファが入っている教科書になっております。先ほど言いましたように、二〇〇三年十二月からは、授業においてもそういうことをやってください、内容を指導要領どおり、教科書どおりでない部分、どんどんどんどん子供に即して、あるいは学校の理想に即して工夫してくださいねということが内容についても時間数についても入っております。
同時に、これから指導要領を改訂する、今これが終わればやるわけですけれども、その中で、そういうふうな最低基準にするものでできるだけ少なくしたいねと、あるいは柔軟にこれ扱えるようにしたいねと。そうしないと、どうしても建前と実態が乖離したままでいくことになりますので、学校に即して、子供に即してということでやれるような、そういう指導要領の表現の仕方、あるいは中身の込め方ですね、ということをやりたいねということでずっと話合いをしております。
こういうことも少し流れとして御報告しながら、私の考え方を申し上げてみたいと思います。
○鰐淵洋子君 ありがとうございました。
済みません、時間になりましたので、お二人の参考人しか御意見伺えませんでしたが、冒頭も申し上げましたが、今日大変に貴重なすばらしい御意見いただきましたので、それを基にしっかりとまた当委員会で審議をさせていただきます。
大変にありがとうございました。
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